ゲームQAに特化した書籍がついに出た。そして、ゲームQA業界が抱える課題について

ゲームをテストする バグのないゲームを支える知識と手法 | 花房 輝鑑 |本 | 通販 | Amazon

 

明日から使える技術的なことも書いてあるし、QA部署を立ち上げることになった人に役立つ情報もあるし、ゲームQA業界の歴史読み物にもなっている。ゲームQAに携わる人はぜひ読んでほしい。

 

が、読んで欲しい人達には、きっと届かない。

これが、ゲームQA業界が抱える大きな課題だと思う。

 

その課題とは、ひとことで、率直に、忌憚なく、痛烈に、無遠慮に言うならば、「ゲームQAの人たちは不勉強である」ということだ。ゲームQAの人たちは、勉強をしない人たちが多い。

 

ゲームQAは、ゲーム操作と多少の文章読解力と文章作成能力があれば、なることができる(採用してくれる会社が多くある)。つまり、なりやすい。間口が広い(ただ、その分、給料はかなり控えめな額からスタートする)。

これはゲーム業界の他の職種と大きく異なる。プログラマーになるためには、プログラミングをそれなりに勉強しておく必要があるし、アートやサウンドも、それなりの量の鍛錬を積まないと、スタートラインに立つことは難しい。

 

不勉強だけど、ゲームが上手いからか、要領の良い人はそれなりにいて、なので仕事は案外ちゃんとまわる。業界として、マニュアル化もしっかりなされている。どのような人が来ても、戦力になるような受け入れ態勢が出来ている(すごいことだと思う)。

要領の良い人は、トントン拍子でテスト管理者になったりするが、しかし、そこで打ち止めになることが多い。その先のキャリアが用意されていない。用意されていないというか、これまで、だれもちゃんと考えてこなかったのかもしれない。

 

一方、Web業界のQAエンジニアは、多種多様な役割が用意され、年収も悪くない。500万以上はザラにある。

 

ゲームとWeb業界の差はなんなのか。

私見ですが、ゲームQAは労働集約的であり、組織の一部として振る舞うことが求められる。指示と遂行の関係である。そして、指示する側も遂行する側も、マニュアルがしっかりしている。具体的な課題を解決することが求められる。要領が良ければ価値が出せる。

 

Web業界のQAは少人数であれもこれもやる必要がある現場が多い。個人の幅広い能力が試される。やるべきことを自分で見つけて、それを遂行する。抽象的な課題を解決することが求められる。勉強をすることで、自分の提供価値範囲が広がっていく。

 

ゲームQA業界の未来は明るくない気がしている。

ゲーム以外の娯楽が増えてるし、そもそも少子化だしで、ゲームQAに興味持つ人は減っていくと予想される。そこに低賃金が加わると、より担い手は減るだろう。

 

ゲームQAの賃金を上げたい。僕はゲームQAには、その価値があると思う。ゲーム開発とソフトウェアテストの専門性をかけあわせ、開拓していけば、個人が提供できる価値は大きく増えると思う。スキルを増やし個人の生産性を2倍にしよう。そうすれば、人の数は今の6割7割くらいで済むだろうし、そうなったら一人ひとりの年収は1.5倍にはなるはず。僕は、これは夢物語では無いと思っている。

 

どうすればそのような世界になるのかというと、まずは採用の基準を変えることなのかな、と思う。「ゲーム好きあつまれ!」を止めるところからじゃないかな。ゲームは好きな方が良いが、その前に、仕事にちゃんと取り組めて、勤勉で、素直な人を採用する。気長な道だが、4~5年経てば、今とはだいぶ違うゲームQAの姿になっている気がする(たとえばだけど、全員がプログラマー出身のゲームQAチームがあったら、今のゲームQAとは、全く異なる価値を提供しそうな気がしませんか)

 

コントローラとスマホを脇に置いて、たまには書を読むところからスタートしよう!