育成なのか選抜なのか

社内外の管理職レイヤーの方とお話していると、メンバーの育成に対する悩みが多い。しかし、よくよく聞いてみると、それは「育成」ではなく「選抜」なのではないだろうか?と思った。

 

習得すべき知識や技能があり(役割といっても良い)、それらを身につけるためのカリキュラムを提供し、それが出来ているかどうかをテストする。この流れのことを「育成」と呼んでいるような気がする。テストの結果次第で、「できる」「できない」「めっちゃできる」みたいな評価をもらう。僕はそれは「選抜」なのではないか、と思う。受験や資格勉強の対策に近い。

 

一方、僕が思う育成というのは、あくまで個人に対してのものである。チームとしての期待したい役割もあるっちゃあるが、それよりは「この人は何が好き/嫌いで、何が得意/不得意で、どうすれば伸びるのか」ということに関心がある。それをもとに役割を決めるし、中長期的なキャリアパスも考える。そのため、基本的にはオーダーメイドになる。

 

選抜の良いところは、見通しが立てやすいということにあると思う。決まった役割があり、それをこなせる人が来るので、一度仕組みを作ってしまえば業務が安定する。一方デメリットは、環境の変化に弱いことと、安定と引換にチームとしては停滞に向かうことにある。

 

格闘ゲームでいえば「習得困難なハメ技」に近い。一度覚えてしまえば、勝ちまくれる。しかし、勝ちを集めてはいるが、自身は成長しない。また、ゲーム内容がアップデートされるとそのハメ技は通用しなくなるかもしれない。

 

選抜というシステムは結果がわかりやすい。したがって、改善もし易いし、再現性も高い。一方で僕がいうところの育成は、複雑性が高いし再現性も低い。指導者次第なところがある。パフォーマンスも安定しないが、しかし、驚くような結果が出ることもある。

 

芸術や芸能やスポーツの世界は、ある程度は選抜で人をふるいにかけ、そのあとは指導者(監督やコーチ)がオーダーメイドで育成をしているように見える。サラリーマンは選抜だけで、成長は個人に委ねられている。サラリーマンにも育成の意識があれば、より良くなるのではないかしら。

 

そうは言ってもお前の言う育成ってなんやねん、イメージわかんわ。
という方には、ブルーピリオドという漫画にでてくる大葉先生(美大受験編に出てくる)と、Draft Kingという漫画に出てくる郷原というスカウトがやっていることが、僕が思う育成のイメージです。どちらの漫画もすごく面白いです。おすすめ!