- 作者: ジェームズ・ウィテカー,ジェーソン・アーボン,ジェフ・キャローロ,長尾高弘
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2013/05/23
- メディア: 単行本
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簡単で地味な作業、低所得、(プログラマ、ディレクタの)揚げ足取り
ソフトウェアのテスト、または、QA(品質管理)に、上記のような印象を持ってる人もいるのではないでしょうか。
私自身、QAをやってるので、「そう思われてるなぁ」という実感があるし(新卒とかの経験の浅い人がそういうイメージを持ってることが多い)、また、僕はキャリアのスタートをプログラマとしてスタートしたけど、確かに当時は上記のようなイメージを多少持っていた(ま、経験浅かったし無能だったし…)
そんなテスト・QA担当者ですが、世界No1のソフトウェア企業である、グーグルのテスト担当者ってどんな感じなのかというのを、この本では、解説しております。
そこには、(日本の)テスト業界で働く人たちにとって、夢のような世界が広がっているのであった…。
■まえがきの感想
3人の筆者によるまえがき。なかなか読み応えのあるまえがきでした。
グーグルも最初の頃、それこそスタートアップの頃は、手動による探索テストが中心だったが、サービスが大きくなり、かつスピードが求められるようになってきた段階で(この「スピード」というのがグーグルのキーワードだと思いました)、ソフトウェアテストにイノベーションをもたらす必要性を感じたとのこと。
大規模で高品質なサービスを、ベンンチャーのようなスピード感でリリースし続けるために必要なこととは何か。
いまでこそ、アジャイル開発だとかで、サイクルの早い開発スタイルはポピュラーになってますが、当時(2005年くらい)のソフトウェア開発は、ウォーターフォールで、数か月・数年、ってのが普通だったわけで、そのプロセスの一環であるテストも、基本的には地味で時間のかかる作業でした。
グーグルは、この課題をどうやって解決したのか。
それはずばり、品質はテスト担当者が責任を持つものではなく、各プログラマに担わせたのでした。
テストチームとは、「プログラマが品質を担保する」という思想を広げるための活動、並びに、その思想を実現をサポートするためのツール開発を行うチームとして動いた、と。
つまり、「テスト」の定義をゴロっと変えたわけですね。(今では、部署名も「テスト」ではなく「エンジニアリングプロダクティビティ」という部署になったそうです)
そのために、まず必要だったことは、一言でいうと、「エンジニアの素養を持った人の採用」だったようです。しかし、これは、なかなか難しい。そもそも、エンジニアの素養を持った人は、エンジニアになってしまうからね。
これは、テスターよりもエンジニアの方が、一般的に給与も良いし、やりがいもあると思われているからです。
誰だって、何かの揚げ足を取るよりは(実際はそんな仕事じゃないけど)、何か製品を作って世の中にインパクトを与える方が、やりがいを感じるでしょうしね。これは、初期のグーグルでも同じだった模様。
そんな状況を、どう打破していったのか、というのが本書で語られていくようです。
今では、1200人のテスト系エンジニアを抱える部署となり、給与体系もエンジニアと全く同じになったそうです
グーグルのノウハウは、果たして日本のIT企業で参考になるのか。
それとも、単なる超一流企業に入社できる選ばれし者たちのみが甘受できるユートピアの物語なのか。
つづく